少し前に「阪神優勝」という登録商標が話題になりましたね。
権利者は別に阪神球団に商標権を売りつけて儲けようとしていたのではな
く、自分の商品に使用するために商標登録を受けていました。
話し合いは決裂したらしいのですが、一時期は球団が商標権を買い取ると
いうことで話しが進んでいました。
その頃に他の球団名と「優勝」の文字を組み合わせた「**優勝」という
商標が他の人から出願されたという話しを聞きました。
たぶん「商標権を取って球団に売りつけて儲けよう」みたいなことを考え
た方がおられたのでしょう。
他人が欲しがりそうな商標を先に取っておき、高額で売りつける人を「商
標ブローカー」などと呼びますが、実際のところ 商標ブローカーとして利
益を上げることはかなり困難です。
理由としては以下のことがあげられます。
(1) まず、商標登録のために登録料を払う必要がありますが、この登録料は
指定する商品区分毎に44,000円(5年分)かかります(10年分なら
66,000円)。
商標を売り込もうと考えれば1つだけではなく複数の商標権を保有する必
要があると考えられ、その商標権の指定区分も複数となることが多いと考え
られます。
例えば指定区分が3区分の商標権を10個保有するためには、登録料は
44,000円*3*10 で132万円(5年分)となります。
登録料だけでもかなりの費用となりますが、実際にはそれ以外に出願時に
納付する出願料も必要となります。
これだけ費用をかけて商標権が高額で売れなければ「大赤字」となりま
すね。
(2) 商標を一定期間使用していない場合、不使用取消審判という手続きによ
り登録が取り消されることがあります。
商標ブローカーは自分では商標を使わないので、取り消される可能性は高い
です。
(3) 商標権の譲渡に大金をかけられるような大きな企業は最初から必要最低
限の商標は出願しています。そういう意味で、本当に欲しがる商標を他人が
先に出願して登録を受けるというのは難しいです。
(4) 出願しても「他人の業務に係る商品又は役務と混同を生ずるおそれがあ
る」として拒絶される可能性が多いです。もちろん拒絶されれば出願費用は
無駄になります。
又、登録されても無効審判の請求により登録が無効とされることもありま
す。
ちなみに、商標「阪神優勝」についても、球団側は「この商標は本来登録
されるべきでない」としては登録の無効審判の請求をしているとのことです。
このように「商標権を売って儲ける」のは実際には大変困難ですし、そも
そも商標登録の制度は「自分の使っている商標を守る」ということを前提と
した制度ですので、商標ブローカーの行為は制度の悪用と言えます。
ということで、賢明な皆様は「商標ブローカーになって儲けよう」なんて
バカなことは考えないようにしましょう。 |
|